突然ですが、あなたは「アドルフ・ヒトラー」を知っていますか?
ドイツの権力を掌握して大量虐殺をした、ということぐらいは多くの方が知っていることでしょう。
ですが、ヒトラーが所属するナチ党は国民の意思によって選ばれたのです。
ではなぜ彼らはヒトラーを選んだのでしょうか?
それはヒトラーは大衆の心を掴み、自分の思い通りに動かす能力が非常に高かったからでした。
ということで、今回はヒトラーの使った心理操作のテクニックを5個紹介していきます。
知っていれば自分の生活に応用できたり、自分を操ろうとしてくる人に抵抗できるようになるハズです!
また、この記事は許 成準さんの著作『ヒトラーの大衆扇動術』を元に作成しています。
今回紹介するテクニックは一部なので、もっと知りたい方は是非買って読んでみてください!
- 1.人は時間と場所に洗脳される
- 2.怒りは人を動かす
- 3.英雄ファンタジーは爆発的な人気を獲得する
- 4.嘘を大衆を騙すためだけでなく、自分を騙すためにも使う
- 5.現状に不満を持つ人は騙されやすい
- ex.実際のヒトラーの演説内容
1.人は時間と場所に洗脳される
人は誰でも自由意志で行動しているように感じますが、実は人間には共通した心の動きも存在しています。
例えば、暗い場所から光が差してくればその方向を見てしまう、などです。
ヒトラーはこのような人間の本能的な反応を上手に利用したのです。
彼はサーチライトの光が発する方向に立って演説したり、壮大な夕焼けを背にして人々の前に現れるなどの手法を使いました。
こうすることで全員の視線を自分に集中させたのです。
また、ヒトラーはいつ何時でも演説したわけではなく、夕暮れ時に演説の時間を設定しました。
これは夕暮れが人間の心理的抵抗の最も弱い時間帯だからです。
「好きな人に告白するなら夜がいい」と聞いたことがある人もいるかもしれませんが、これも同じ理由ですね。
さらにヒトラーはすぐに演壇に上がるということもしませんでした。
彼が現れる前にタメを作り、荘厳な打楽器の音を響かせることによって人々の期待を煽ったのです。
そして待ち焦がれた民衆の前に夕日で赤く染まった空を背景にヒトラーが登場し、会場は熱狂の渦に巻き込まれました。
すでに聴衆は喜んでヒトラーの催眠にかかる準備が出来ており、この時点ですでにヒトラーの演説は半分以上成功していたわけです。
そしてこれは話の内容よりも周りの雰囲気の方が重要であることの証明でもあります。
2.怒りは人を動かす
世界で最も有名な放送人と言われるラリー・キングは、上手に話す人について
1.自分の仕事に情熱を持っている人
2.自分の仕事を面白く説明できる人
3.ユーモアのセンスがある人
4.何かに怒っている人
の4つのタイプがあると述べています。
4つ目の「怒っている人」は、まさにヒトラーが当てはまっていて、彼は長い間蓄積され凝縮された怒りの感情を爆発させ、熱狂的で感情的な演説を展開したのです。
また、ヒトラーは自分の怒りを言葉で論理的に表現する能力が高く、ストレートな感情とメッセージを民衆に伝えることができました。
その結果、民衆はヒトラーの怒りに同調し、自ら彼の思惑通りに動いてしまったのです。
そもそもなぜ怒りを抱いている人が巧みに話せるかというと、自らの体験による鬱積した思いがあるからで、その生の感情には人の言葉を借りるよりも遥かに強いエネルギーが凝縮されていて、それが聴いている人に伝わるからです。
逆に愛で大衆を動かした扇動家は未だかつて存在しません。
かの「非暴力」をモットーとしたマハトマ・ガンディーでさえも、あれほど多くの人々を行動させたのは、インド人を搾取したイギリスに対する怒りでした。
3.英雄ファンタジーは爆発的な人気を獲得する
指導者が苦難の道を歩みながらも信念を曲げなかった時にこそ、その信念はより大きな影響力を持つようになります。
ヒトラーにとって最大の試練は、政治活動初期の1923年11月に「ミュンヘン一揆」と呼ばれるクーデターを起こした時です。
当時のドイツ国民は、無能なドイツ中央政府に対する不満で溢れていました。
そんな最中、ヒトラーは突撃隊を動員して、バイエルン政府の主要な人物を捕らえて監禁し、政府施設を占拠しようと試みたのです。
そこで彼は法廷で自分のしたことを全て認め、むしろ自分の意思を明確に表明しました。
その結果、なんとヒトラーは「ドイツ再建のための強力な政府」を主張した人物として大衆から高い人気を得ることになり、国家クーデターという重罪をわずか9ヶ月という短い期間で釈放されることになったのです。
ヒトラーについてよく知らない人は、ヒトラーのパワーは暴力などのハード・パワーに基づいていたと思いがちですが、それは違います。
むしろヒトラーの力はソフト・パワーに基づいていました。
彼は巨大な敵に立ち向かう弱者が正義の英雄のように映ることをよく知っており、それを実践してみせたのでした。
そして、その戦略は予想以上に成功し、次第にドイツ国民のヒトラーのイメージは、ドイツを再建できる唯一の救世主のようになっていったのです。
4.嘘を大衆を騙すためだけでなく、自分を騙すためにも使う
ヒトラーのカリスマ性は、絶えず自分を美化し、嘘をつくことで形成されていきました。
例えば、彼の著作である『わが闘争』は嘘と誇張だらけでした。
つまり、彼は自分の自伝まで宣伝道具として使ったのです。
ですが、これらの嘘は大衆だけでなく、ヒトラー自身をも騙していったのです。
どういうことかと言うと、
1.ヒトラーが大衆の聞きたがる希望的な嘘をつく
↓
2.大衆が疑いながらも耳を傾ける
↓
3.真偽は分からないが、嘘があまりにも希望的なので一部の人が熱狂的なファンになる
↓
4.ファンの熱狂的な反応からヒトラー自身も自分の嘘を信じるようになる
↓
5.ヒトラーは、より確信を持って主張し、さらに多くの人々が騙される
↓
6.結局ほとんどの人がヒトラーの嘘を信じるようになる
↓
7.ヒトラーも大衆の反応から自分の嘘に確信を持つようになる
↓
8.自分の主張を100%確信するヒトラーと多くの大衆を見て、残ったわずかな人も呑まれる
という過程を経ていったのです。
このような「嘘のフィードバック」は海の青い色が反射して空も青い色になり、さらに空の青い色が反射して海がより濃い青い色になる、ということに似ています。
希望的な嘘が希望的な結果を生み、より希望的な嘘を呼び込み、それはまた希望的な結果を生む。
それが繰り返されると、大衆はヒトラーのことをなんでも理想を叶えてくれる救世主のように思い、心酔してしまったのです。
実はこれは現代でも見ることができます。
例えばアメリカで4番目の金持ちであるオラクル創業者のラリー・エリソンは、まだ開発を始めていないソフトウェアがすでに開発中であるように大口を叩くことで有名です。
そして、それを発表してしまった以上、なにがなんでも成し遂げなければいけないと思い、彼や会社の社員は一生懸命頑張って事業を成功に導くのです。
また、最も皮肉な事例は、ベストセラー『金持ち父さん貧乏父さん』の著者ロバート・キヨサキの成功です。
彼は『金持ち父さん貧乏父さん』を書く前は金持ちではありませんでした。
しかし、金持ちのフリをして書いた本がベストセラーになり、彼は本当に金持ちになったのです。
嘘をつかないことは美徳だと教育されますが、どうやら「優秀なリーダーは嘘が上手な人である」と覚えておくべきなのでしょう。
5.現状に不満を持つ人は騙されやすい
そもそもヒトラーがドイツの首相になったばかりの1993年1月、ドイツは600万人を超える失業者がいて、飢え死にする人の数も今とは比較にならないほどでした。
しかし、わずか3年後の1936年には失業者がほとんどいなくなりました。
多くの人はヒトラーの統治下では、ドイツ人の日常生活は抑圧されたものだと考えがちですが、実は彼は経済や治安など、国民の生活を重視した政策を進めていったのです。
そして、彼の計画通りに発展していく祖国の姿を国民に見せ、信頼を勝ち取っていきました。
これはヒトラーが国民の望みを汲み取る力が高かったのもありますが、そもそも人が弱っている時は非常に騙されやすいのです。
そして、人は人を判断する時に善人であるか悪人であるかということよりも、自分に利益を与えてくれるかどうかを基準にしている場合がほとんどだということを、ヒトラーは理解していたのでした。
ex.実際のヒトラーの演説内容
最後にヒトラーの演説を少しだけ紹介します。
これまでの項目を意識しながら読むと、そのカラクリがわかってくるかもしれません。
ドイツ国民は凄まじい苦しみの経験をしてきました。
これはまるで我が民族が勤勉ではないからだと思われているのですが、絶対そうではありません。
数百万の我が民族は昔のように一生懸命働いています。
数百万の農民は昔のように棃で田畑を耕しています。
数百万の労働者は騒々しい工作機の前に立って労働をしています。
数百万の我が民族は仕事をしています。
しかし残りの数百万の国民は仕事をしたくてもすることができないです。
数万の人々が自ら人生を終わらせました。
彼らにとって人生はただ苦痛と貧困の連続のように思われたのです。
彼らは生を来世に変えました。
来世でのより良い境遇を夢見たのです。
極端な苦痛と不幸が私たちに襲いかかってきました。
そして私たちは自信を失うようになったのです。
ただ絶望感だけでした。
それについて私たちは訊きたいのです。
一体どうしてこのようなことになったのでしょうか?
何かあれば
までどうぞ!