現代は「VUCA」の時代と言われています。
VUCAとは「Volatility = 変動」「Uncertainty = 不確実」「Complexity = 複雑」「Ambiguity = 曖昧」の4つの語の頭文字を取った言葉で、要はあらゆる変化の幅も速さも方向もバラバラで、世界の見通しがきかなくなった時代だということです。
このような時代では「既存のレールを辿っていれば成功できる」ということはありません。
だからこそ「何をしていけばいいのだろう?」「このままでいいんだろうか?」と感じてしまう人も多いのではないでしょうか?
よく「時代の変化に対応しながら新しい正解を見つけよう」とは言いますが、これからもっと時代の流れが速くなっていくことはほぼ確定的で、その度に「新たな正解」を見つけていくのはほぼ不可能です。
ではどうすればいいのか?
それは「数学」のように正解を見つけようとするのではなく、「美術」のように自分なりの正解を作り出すこと。
そしてそのために「アート思考」を身につけることです!
ということで今回は「アート思考」の解説と、それを実践した偉大なアーティストについて解説していきます。
難しい現代を生きるためのヒントに少しでもなれば幸いです!
また、この記事は末永幸歩さんの著作『「自分だけの答え」が見つかる 13歳からのアート思考』を参考に作成しています。
本ではもっと詳しく解説されているので、興味がある方は是非読んでみてください!
1.「アート思考」とは?
「アート思考」とはその名の通り「アーティストのように考える」ことです。
ですがこれは上手に絵を描いたり、美しい造形物を作ったり、歴史的な名画の知識を語れるようになろう、ということではありません。
アーティストは目に見える作品を生み出す過程で、
・「自分だけのものの見方」で世界を見つめる
・「自分だけの答え」を見つける
・それによって「新たな問い」を生み出す
の3つのことをしています。
「アート思考」とはまさしくこうした思考プロセスのことで、「自分だけの視点」で物事を見て「自分だけの答え」を作り出すための作法です。
2.自分の中にある「興味」を深堀りする
とはいえそう言われても、問題はどうしたらそのような思考過程に至れるのかということですよね。
それは「自分の興味があることを深く掘っていく」ことです。
レオナルド・ダ・ヴィンチを例にします。
彼は誰もが認める正真正銘のアーティストです。
しかし、それはダ・ヴィンチが超有名だからではありません。
また、『モナリザ』をはじめとする彼の作品が卓越した描写力で美しく描かれているからでもありません。
ダ・ヴィンチが正真正銘のアーティストと言えるのは、彼が自分の興味をどこまでも深く追究した代表的な人物だからです。
彼は師匠に教わった絵の描き方や書物にある知識だけでは満足しませんでした。
だからこそ自分の目や手を使って自然界を徹底的に観察し、あらゆる事象を理解しようとしたのです。
「何で海は青いのか?」
「雲の上はどうなっているのか?」
そんな子供のような自由奔放な疑問を彼は自分の興味の赴くままに探究していき、それはアートの範囲を超えて科学の分野へも進出していきます。
例えば30体以上の人体を解剖し、膨大な数のスケッチと研究で人体の構造を探ったり、ライト兄弟が飛行機を発明する4世紀も前に昆虫や鳥の飛翔原理の分析をしたり。
またガリレオ・ガリレイが地動説を提唱する以前に「太陽は動かない」という言葉を自分の研究ノートに記しているというから驚きですよね!
彼がやっていたのはまさしく「自分の内側にある興味を元に自分のものの見方で世界を捉え、自分なりの研究を続ける」というアート思考のプロセスそのものです。
そしてダ・ヴィンチにとってはそれの方が表現を発表するよりも大切なことでした。
故に彼は7000ページ以上にも及ぶスケッチや研究があるにも関わらず、完全に仕上げた絵画作品は生涯でたった9点ほどしかありません。
しかしそうであったからこそ『モナリザ』をはじめとする彼の表現の花は、500年経った今でも独自の輝きを放ち、世界中の人々に影響を与え続けているのです。
3.アート思考は全ての人に役立つ
ここまで読んでくれた方の中には
「『アート思考』が凄いのは分かったけど、自分は別にアーティストになりたいわけじゃないし、そもそもダ・ヴィンチのように才能もあるわけじゃない...」
と感じている人もいるかもしれません。
確かにごもっともな意見です。
ですが、ここで伝えたいことはアート思考は画家や彫刻家といった狭義のアーティストを目指す人のためだけのものでもなければ、デザイナーのようなクリエイティブ関連の仕事に就きたい人のためのものでもないということです。
また、生まれ持った才能やセンスに依存するものでもありません。
・誰かが敷いたレールの上をなにも考えずに歩んでいないか?
・自分の内側にあったはずの興味を放置していないか?
・様々な理由を言い訳に探究することを途中で諦めていないか?
これらは日々の仕事や学び、さらには生き方全般にも当てはまる問いです。
結局のところ、ビジネスだろうと学問だろうと人生だろうと、こうして「自分のもの見方」を持って「自分なりの答え」を作る人こそが、結果を出したり、幸せを手にしたりしているのではないでしょうか?
アート思考はまさにこの「自分のものの見方」「自分なりの答え」を手に入れるための考え方なのです。
その意味で、アート思考は全ての人に役立ち得るのです。
とはいえ身構える必要はありません。
「全ての子どもはアーティストである。問題なのは、どうすれば大人になったときにもアーティストのままでいられるかだ」
これはパブロ・ピカソの名言です。
人は誰でもアート思考をかつては実践できていたはずで、これはあなたも決して例外ではありません。
子供だった時のことを思い出してみてください。
名前も知らない小さな花が目に留まり、しゃがみこんで観察したこと。
近所に見知らぬ小道を見つけて、「どこにつながっているのだろう?」とワクワクしながら探検してみたこと。
公園の砂場で自分だけのお城を作ってみたこと。
アート思考を取り戻すのは決して難しいことではありません。
「新たなことを学ぶ」のではなく、「かつて実践していたことを思い出す」だけでいいのですから。
何かあれば
までどうぞ!