情報が錯綜する現代。
何が正しい情報で、何が間違っている情報か分かりませんよね。
僕たち現代人は、昔よりはるかに多くの知識を得られるようになりました。
にも拘わらず、なぜこのようなことになるのでしょうか?
関心を持つ情報が増えたから、気になる事も増えたという理由もあるでしょう。
しかし、それでは間違った情報が増えるということの説明がつきません。
実は、このようなことがおこるのは「知識のパラドックス」というものが存在するからなのです。
ということで今回は、現代を生きるために知っておく必要のある「知識のパラドックス」という現象について解説していきます!
この記事はユヴァル・ノア・ハラリの著作『ホモ・デウス テクノロジーとサイエンスの未来』という本を参考に書いています。
この本を読む前と後では、現代に対しての価値観が全く変わります!
是非、買って読んでみて下さい!
「知識のパラドックス」とは?
最初に「知識のパラドックス」とは何なのかについて答えを言っておきます。
それは、
「使える知識を増やせば増やすほど、使えない知識が増えていく」
ということです。
あまりピンとこないでしょうか。
なぜこれが起こるというのかというと、
「人間に関連した物事が展開する過程は、僕たちの予測に反応してしまうため」
です。
もっとピンときませんね。
大丈夫です、これから分かりやすく解説していきます。
人間の予測に反応しない現象
物事には人間の予測に反応するものと反応しないものがあります。
反応しないものというのは、例えば天気です。
天気は、今どこに雨雲があってそれがどのように動くか、それによって明日は雨か晴れか、はたまた雪が降るのかなどを予測することが出来ます。
そして、その予想によって、
「人間が予測を立てたから、あえてこっちの方向に進路を変えてみよう」
なんて、雲が動きを変えることはありません。
地震や潮の満ち引きも同様に、人間の予測に反応しない現象ですね。
人間の予測に反応する現象
対して、人間の予測に反応する現象はどんなものがあるでしょうか?
例えば、石油価格です。
もし仮に、明日の石油価格を100%の精度で予測するプログラムを開発したとします。
今日の石油価格は1バレル当たり90ドルですが、そのプログラムによると、明日には石油価格が100ドルに上昇するというのです。
その予測を聞いた人々は、今日石油を買い占めようとするため、明日ではなく今日、100ドルに値上がりします。
つまり、明日の石油価格が上昇するという予測によって、その予測が外れてしまうのです。
また、仮の話ではなく、現実に起きたこんな話もあります。
19世紀半ばに、カール・マルクスは
「労働者階級と資本家の争いはしだいに暴力的になり、最後には労働者階級が必ず勝利し、資本主義は壊滅する」
という予測を立てました。
しかし、彼は資本家も字が読めることを忘れていたのです。
資本家は彼の予測を真剣に捉え、『資本論』を読み、マルクス流の分析の道具や見識の多くを採用しました。
さらに、20世紀にはホームレスの子供から大統領まで、みんながマルクス主義を頭に入れました。
人々はマルクス主義による診断を採用しながら、それによって自分の行動を変えていきました。
イギリスやフランスといった国々の資本主義者は、労働者の境遇を改善し、彼らの国家意識を強化し、政治制度の中に取り込もうとしました。
その結果、マルクスの予測は外れたのです。
つまり、「必ず労働者階級によって資本家が倒される」という予測が、イギリスやフランス、アメリカなどの主要な工業国を共産主義革命から回避させたのです。
これが人間の予測に反応し、結果を変えてしまう現象ということです。
「知識のパラドックス」が加速する時代
行動に変化をもたらさない知識は役に立ちません。
しかし、行動を変える知識は、このようにすぐに妥当性を失ってしまう。
これが「知識のパラドックス」です。
そして、この「知識のパラドックス」は、得られる情報が多くなればなるほど、言うなれば人が賢くなればなるほど加速していきます。
何世紀前も前は、人間の知識はゆっくり増えたので、政治も経済もゆっくり変化していきました。
対して、現代を生きる僕たちの知識は恐ろしい速さで増えています。
それならば理論上は、僕たちは世の中をもっと理解できるはずです。
ところが、現実は正反対のことが起こっています。
新しく見つかった知識のせいで、経済も社会も政治も前よりも早く変化してしまう。
僕たちはその状況を理解しようとして、知識の蓄積を加速させる。
すると、なおさら速く大きな変動につながるというわけです。
野球の上達の仕方、人間関係を円滑に進める方法、ビジネスの成功方法...。
これら多くの人の関心を惹く知識は、みんなが吸収しようとするが故に、時代遅れのウソの情報が多くなってしまいます。
昔のある時点では正解だったことも、現在ではそれよりも正解の答えがある。
そのせいで、それ以外が嘘の情報になってしまいます。
そして、その現時点での正解もいずれ出てくる更に良い正解によって、不正解に変えられてしまうのです。
このような仕組みが、何を信じていいのか分からない現状を生んでしまっています。
なにせ、情報を流している本人も正しい情報を言っていると思ってしまっているのですから。
そして、そのような状況は、今後さらに加速することでしょう。
まとめ
今回は「知識のパラドックス」について解説していきました。
人が予測することにより結果が変わる現象において、唯一絶対の正解は存在しません。
ある時点では正解であっても、ある時点では正解でなくなるからです。
大切なことは、人が言っている正解をある程度信じ、ある程度疑うということです。
そして、たった一つの正解を求めるのではなく、変わりゆく正解を求め続けていくという姿勢です。
今を生きる僕たち、いや、さらに「知識のパラドックス」の加速した未来を生きるであろう僕たちは、常にこの螺旋に追いつくように努力していくことが必要なのでしょう。
あなたも、たった一つの情報に騙されないように「知識のパラドックス」を念頭に考えてみて下さい!
何かあれば
までどうぞ!