「父が最後に見た景色は、わたしをその向こう側、次の世界へと導いてくれるに違いない。そして、いつか、わたしの描いた景色で、次の世界に行くことができる人が、それを希望と感じる人が、一人でも多く現れてくれればいい。そうなればわたしは、この世に自分が存在していることに、誇りを持つことができそうだ。」
湊かなえさんの最新作『落日』、さっそく読みました!
目次
1.作品紹介
2.印象に残ったところ
3.まとめ
湊かなえの新たなる代表作、今年最高の衝撃&感動作。重い十字架を背負って生きる人々の心の叫びと希望の灯。“落日”の向こうに見える未来とは!?入魂の書き下ろしミステリー長篇。新人脚本家の甲斐千尋は、新進気鋭の映画監督長谷部香から、新作の相談を受けた。『笹塚町一家殺害事件』引きこもりの男性が高校生の妹を自宅で刺殺後、放火して両親も死に至らしめた。15年前に起きた、判決も確定しているこの事件を手がけたいという。笹塚町は千尋の生まれ故郷だった。この事件を、香は何故撮りたいのか。千尋はどう向き合うのか。“真実”とは、“救い”とは、そして、“表現する”ということは。絶望の深淵を見た人々の祈りと再生の物語。
引用元:http://www.kadokawaharuki.co.jp/book/detail/detail.php?no=6079
2.印象に残ったところ
・2人の主人公が交互に変わりながら物語が進んでいく
多くの小説は1人の主人公の視点で物語が進んでいきます。
が、一つの長編物語を通して2人の主人公が、共通の世界観の中で、異なる目的を持って進んでいくというのは中々ない形式なのではないかと感じました!
もちろん、その形式だからこそ描ける景色があります。
例えば、片方の主人公がもう片方の主人公に詰め寄るシーン。
詰め寄る側の気持ちも分かるけれど、もう片方の過去や心情も読んできているため、どちらに感情移入したらよいか分からなくなります。
その結果、なにか自分自身が詰め寄られているような気持ちになるのです。
「この場面、自分だったらこう言うな~」、とか「そんなに自分悪いかな?」とか。
そして、そうこうしているうちに、自分でも気づかないうちに物語にのめり込んでいく体験は新鮮でした!
・“表現する”とはなにか
2人の主人公は脚本家と映画監督です。
片や、天才と呼ばれているほどの大注目監督、片や未だ花開かぬ脚本家。
彼女たちは、一見に似たような原動力や能力が必要とされるような気がしますが、物語中盤で、実はお互いは似て非なるものを原動力として動いているということを指摘されます。
そして、この物語を通して2人とも成長して、お互い“表現する”ということに対しての理解を深めていくことになります。
この描写には、湊かなえさん自身の価値観が投影されているように思うのです。
何かを人に届けるような仕事や理想を持つ方にとって、この価値観に触れること自体に大きな価値があると思いますね!
・散りばめられた伏線
流石、これまで多くミステリー小説を手掛けてきただけあって、伏線の張り方が見事だなあと思いました。
もちろん、読んでいて「これ怪しいなあー」と思いながら読むところもあったのですが、「え?あ、これがあれだったのか!」という予想もしていなかった伏線もありました!
やっぱりこの感覚を味えることが、ミステリー小説をよむ醍醐味ですよね!
3.まとめ
今回は『落日』の作品紹介と印象に残った所を書いていきました。
ミステリー小説が好きな人、なにか表現する立場にいる人、人間の暗い部分に触れたい人。
そんな人にオススメできる作品だと感じました!
まだ読んでいない方は、是非読んでみて下さい!